漆 x 地域創生の取り組み

美しい村 飯舘(いいたて)

福島県相馬郡飯舘村のウルシ試験栽培地を訪問しました。



飯舘。
いいだて、ではなくて「いいたて」と読みます(間違えて覚えていました!)。
昭和31年に旧「大舘村(おおたてむら」と旧「飯曽村(いいそむら)」が合併して誕生。「日本で最も美しい村連合」にも加盟していて、山間に田畑が広がる文字通り美しい村です。

2011年の東日本大震災で原発被災地となってしまいましたが、現在は避難指示が解除され、すこしずつながらも帰還者やIターン者が増えつつあります。

今回訪ねたのは、飯舘村の北西部に位置する休耕地を利用した取り組みです。


 

休耕地でウルシの木を育てる

この取り組みは、特定非営利活動法人ウルシネクストが、飯館村の佐藤健太さんと協働して実施しています。


佐藤さん(右から2人目)と NPO法人ウルシネクストのメンバー

飯舘村で自身の会社を営む一方、若手の村議会議員としても活躍する佐藤さんは、「愛する地元にもう一度活力を取り戻したい」「帰還する人たちのためにも新しい産業を生み出したい」という思いでスタートさせました。

3箇所ある植栽地に2019年、2020年に、計1100本のウルシの苗木を植え、2021年は本数は増やさずに、既存の苗木の成長環境の改善を行います。


同じ植栽地でも、苗の成長具合は千差万別


何者かによって折られた苗も。。。

この日は6人のメンバーが集まり、植栽地をぐるりと囲む農道に防草シートを張って、獣(主にイノシシ)除けの鉄柵を立てました。



防草シートは合計約300mくらいでしょうか。。結構大変!!


1m置きにU字杭を打ち込んだり。

農道は細くて車が入れないので鉄柵を人力で運んだり。

農業資材って重いですね(汗)!!


それでも清々しい風や春の日差しが心地よく、みんなでやる作業は楽しい。よい運動不足解消になりました。

最後は鉄柵に看板をつけて完成!


看板: 『国産漆の6次産業化に向けて試験栽培を行っています』

5月の初め。飯舘村のウルシはまだ小さな芽がようやく芽吹いたばかり。植えてからまだ1、2年の苗木はまだ細いものが多いです。
頑丈な鉄柵が獣害からしっかり苗木を守ってくれますように。



 

いいたて村の道の駅 までい館

作業終了後、地元の道の駅「までい館」にも行ってみました。



「までい」とは「丁寧に」「手間ひまを惜しまずに」という意味のこの地域の方言で、もともとは「両方の手」「真実の手」が語源。飯舘村のキャッチフレーズでもあります。

15000平米を超える広大な敷地には、店舗やレストランの他に、大人も子供ものびのびと楽しめる大きな公園が広がっていました。

そして館内には村の花マップも。



飯舘村はもともと花の栽培が盛んで、現在ではそれが村の復興を支える重要な産業にもなっています。

までい館のマスコットは「イイタネちゃん」。

イイタネちゃんのクッキー。。ゆるキャラってなんかキモカワです(笑)。

嬉しいときは頭の上に花が咲くのだそうです。
近い将来、飯舘村のウルシの木にも花が咲きますように!

 

までいに育てる希望のウルシ

翌日、佐藤さんから写真が送られて来ました。
「あのあと草刈りと追肥をやりましたよ」と。



ウルシネクストのメンバーが帰ったあと、一人で作業されたそうです。

だいぶ虫も出て来ました。ウルシの芽は虫たちの大好物。葉っぱを食べられてしまっては木が育ちませんので、対策をしなくてはなりません。

飯舘村の気候は冷涼で、日本随一の漆産地である岩手県二戸市と似ています。それも植栽を始めるきっかけのひとつでした。とは言え、苗木の育成条件は気候だけではありません。
土、水、風、人。



果たしてこの地でウルシの木は大きく育つのか。漆液の質や量はどうか。放射性物質の影響はあるのか。これから様々な検証を重ねながら、試験栽培を実施していきます。

「までい」に暮らすことを提唱する飯舘村で、「までい」に育てられたウルシが、いつか日本の漆産業を支え、飯舘村の復興と活性化の一助になれるとしたら、こんなに嬉しいことはありません。

これからも、応援していきたいと思います。





訪問先:飯舘村

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