第6回奇数の会「箸のコト ~旧暦神在月の新月の日に~」

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十月は神無月。全国の神様が出雲の国に出張してしまい留守になるから。
つまり、出雲の国では神様が集まっているので神在月。
神様たちは縁結びの相談をしているそうな。
2015年11月12日、旧暦神在月の新月の日に、今年最後の奇数の会を開催しました。
今回取り上げた地域は奥出雲。
そしてテーマは「箸」。
ゲストには浅草かっぱ橋のお箸屋「はし藤本店」の上中康成さんにお越しいただきました。IMG_2347

はし藤本店さんは明治43年創業の老舗。
お箸の素材はやはり木です。
上中さんのお話からは、日本の木の文化への愛情がたっぷりと伝わってきました。
木の手触り、美しさ、そして香り。

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そもそもお箸は3500年ほど前に中国で生まれました。青銅の二本箸です。
日本に伝わってきたのはおよそ1800年前。中国ではすでに食事にお箸を使っていたのですが、日本で箸食が始まるのはもっと後のこと。当初は神様に食物をお供えする神事のために使われており、竹製でU字型のピンセットのような形状をしていました。
日本で食事のためにお箸を使い始めたのはなんと聖徳太子の施策なのです。それまでは手で食べていました。遣隋使を派遣して先進文化を積極的に取り入れていた時代。隋からも客人を迎え入れるにあたって、恥ずかしくないおもてなしをしなくてはなりません。そのために定められた食事マナーの中に、箸食があったのでした。
明治時代、西洋文化が盛んに入ってきて、上流階級の人々がナイフとフォークの食事文化を学んだのと同じようなことが、1000年前にも行われていたのでしょう。

今回の奇数の会で紹介する地域「奥出雲」は、文献上初めて「ハシ」が登場する舞台です。12204074_891291784311707_303005084_o
その文献とは奈良時代に編纂された「古事記」。それによれば、スサノオノミコトは川上からお箸が流れてくるのを見つけます。上流に高貴な人が住んでいると察して川を上って行って始まるのがこの地に伝わるヤマタノオロチ伝説です。

現代と同じような箸文化が庶民にまで広がるのは平安時代のこと。
街中に箸売りの声が響くようになります。建設ラッシュだった都の材木の端材から削り出して作っていたと考えられています。

それ以降、日本独特の木のお箸の文化が定着します。
江戸時代には、塗箸や割り箸が庶民の生活にも浸透していきます。

はし藤本店さんの主力商品も割り箸。
上中さんの先祖は、奈良の吉野で酒樽用の杉の端材からお箸を作る職人だったそうです。さまざまなリサイクルが行われる循環型社会構造が特徴だった江戸時代らしい産業です。
しかし、もともとエコ製品だったはずの割り箸も、昭和の大量生産、平成のコスト削減追求型の時代を迎えて以降、工業製品として生産拠点は海外へ移り、徐々に健康被害や環境破壊を誘発するという事態も生じてきます。

日本文化の基本であるお箸がこのままでいいのか。。
これからのお箸とは。。

はし藤本店の上中さんが出した答えのひとつが今年5月にリニューアルされた新店舗でした。はし藤本店
日本の木の文化を味わうお箸。
木と、森と、伝統の大切さを伝えるお箸。
店内には様々な日本の木を使ったお箸が並び、ひとつひとつ丁寧に説明が書かれています。
もちろん塗箸もたくさんあって、産地の情報が掲示されています。

今回、FEEL Jとはし藤本店さんのご縁を結んでくれたのは漆の木のお箸でした。漆の木箸

塗り箸ではなく、漆を掻いた後の木から削り出したお箸。木が軟らかく、お箸にするには何度も試作と工夫が必要だったようですが、腕のいい職人さんによって手づくりされる漆の木箸は黄金色に美しく存在感を放っていました。
このお箸に魅かれた理由は美しさだけではありません。以前も書いたことがありますが、国産漆の生産は危機的状況にあります。漆産業を後世に繋いでいくためには、漆を植え、育て、掻いて、塗る。そして掻いた後の廃材を有効に活かす、という循環が必要になってきます。漆の木箸は大量生産ができるものではありませんが、廃材有効利用のひとつとして注目すべきものと考えています。

会の中盤では、奥出雲食材を使った酒食を囲んでいったん休憩。

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そして後半で、参加者の皆さんとイロイロお箸談義。

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はし藤本店の広報を担当される中田さんからお箸の選び方の豆知識を教えていただきました。(小ネタに使えそうな情報もあり!)

参加者の方からも自ら思い入れのあるお箸の紹介。

輪島塗の姿かたちも美しいお箸。

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堅牢さと優美さが特徴の輪島塗の良さがあふれんばかりに表現されています。

こちらは日本料理の先生がお持ちくださった、お祖母様から受け継がれたという古い菜箸。FullSizeRender (55)

いまでは貴重な素材となった本物の煤竹のお箸もあります。お祖母様が自ら削って使っていたようなあとも見られました。
お箸はあまりにも日常使いされるためか、古いものが残ることは多くはありません。しかし、本当に良いもの、そして思いが込められたものは、後世に伝えられていくのですね。

子供にお箸の文化を伝えることについても話が盛り上がりました。
正しい持ち方やマナーに加え、お箸の歴史や意味、種類など、さまざまなお箸のコトについて家庭や学校などで日常的に話すこと、それがまさに文化なのではと思います。

箸(ハシ)。
日本語の箸と橋、端、そして柱も、語源は同じです。
和食の基礎は神様のお食事のおすそ分けをいただく直会。片方の端(ハシ)で神様が召し上がり、もう片方で自分がいただく、「神人供食」の考え方がもとになっています。
神様と自分を結ぶお箸。
共に食事をする家族や仲間と結ぶお箸。

毎日お世話になっているお箸ですが、改めて見つめ直してみると日本文化の結晶ともいえる奥深い存在でした。

折に触れてお箸に向き合ってみると日本文化の面白さを発見できるはず。

お近くの方は是非浅草かっぱ橋のはし藤本店さんに足を運んでみてください。お箸のコト、木のコト、いろいろ教えていただけます。

間もなくお正月。三が日のお箸は柳の祝箸。なぜ柳?なぜ両側が細くなっている?お箸のコトを考えてみるきっかけにしてみてはいかがでしょう。
第6回奇数の会 「箸のコト ~旧暦神在月の新月の日に~」
主催:  FEEL J http://feelj.jp/
ゲスト: はし藤本店 専務 上中康成氏 https://www.facebook.com/hashitoh/timeline
協力:  LEAGUE http://league-ginza.com/