大島 三原椿油

シェアする

古くから日本人の生活のなかにあった植物、やぶ椿。学名はカメリア・ジャポニカ。日本原産。

花は多くの蒐集家や茶人を魅了し、木材からは椿炭が作られて珍重され、そして種を搾った椿油は薬用、食用、灯用、化粧用と様々に用いられた。とくに江戸時代に入ってからは髪の手入れ油として広く使われるようになり、昭和初期までは女性たちの美しい黒髪を守る必需品だった。

残念ながら近年使っている人は少数派。思い浮かぶのは少々レトロなパッケージに、「昔、おばあちゃんが髪に使っていたらしい」という程度のイメージ。

しかし、最近になって某大手化粧品メーカーが椿油を含むヘアケア商品などを発売して再注目されている。酸化しにくい性質を持つため日焼けや乾燥した肌のお手入れにもイイらしい。肌の脂肪分と類似するオレイン酸の含有率はオリーブオイルよりも高いので健康に気遣う人にもおススメ。いいことづくめだ。

でも結構お高い。食用椿油にはそうそうお目にかからない。。。

そんな乏しい知識を携えて今回訪ねたのは椿油の代表的産地、伊豆大島。

東京から空路でわずか30分の距離にありながら、豊かな海に囲まれて、島中央には活火山の御神火さま(三原山)が鎮座するという別世界。島内には300万本の椿が生えている。椿まつり開催を間近に控え、ちらほらと花が開き始めていた。

元町港からほど近くに位置する「高田製油所」。4代目、高田義土氏はいまなお昔ながらの玉締め圧搾方式にこだわる。

IMG_7795

島民が拾い集めて天日干ししてから持ち込まれた椿の種を厳しい目で選別。鬼皮・甘皮ごと粉砕。蒸してから石臼でじっくり時間をかけて搾る。その後数回の濾過。時間はかかるが品質の高い油がとれる。

もともと椿油は島の林業の副産物だった。三原山に自生する椿の下草を刈り、日当たりを管理する。古木からは炭や木工品の木材を作り、種は油屋に持ち込む。

しかし、時代が移り、炭焼きはいなくなり、椿の林が手入れされることもなくなった。

今は主に農家が種を集め、高田さんのところに持ち込んでくる。強い海風から畑を守る防風林として椿が植えられているのだそうだ。時代にニーズに応じて産業の形が変わるひとつの例と言える。

椿油の製法はいくつかあり、最近は「生」搾りも注目されている。

一方で高田氏は創業当時からの変わらぬ伝統製法を守り、種を持ち込む島の住民たちとのコミュニケーションを大切にしながらゆっくりじっくり油を搾る。その姿勢に大島という土地に生まれた独特の職人魂を感じた。

IMG_7785

今、また次の課題が生まれている。材料の確保だ。

手入れされずに育った椿は年によって種が採れる量が異なり安定しない。この10年で1割人口が減少している大島では種を集める人手が減っていることも否めない。

高田氏は、息子に家業を継がせるかと聞かれると今の状態ではノーだという。

売るための苦労ならがんばれる。でも材料確保の環境を維持する苦労は計り知れないと。

最盛期には大島に20軒以上あった製油業者も今は4軒のみ。

生活や環境の変化の中で淘汰されていく産業があることは自然の摂理。

だが、日本古来の椿という植物が、冬の明けきらぬうちから花を咲かせて目を楽しませ、秋には種から美容にも健康にも優しい油がとれると聞けば、みすみすこの産業を絶やしてしまうことは悲しすぎる。

高田氏のところで小さなボトルを購入した。

FullSizeRender

キャップのピンクは花の色。まずはカサカサの手にハンドクリーム代わりに。使用し始めてまだ3日だが、すでに爪の周りがしっとりしてきた感じ。

化粧用だが食用油をさらに濾過したものなので、もちろん食用に使用しても全く問題ない。ちなみに食用を化粧用に使っても成分に変わりはないのでOKとのこと。化粧用のほうが肌あたりは柔らかいそうだ。高田氏は炒め物も揚げ物もすべて椿油を使用しているとのことだったが、さすがにもったいなくて、オリーブオイル代わりにパンにつけて食べてみた。青臭さが全くなく、すっきりと食べやすい。これはカルパッチョやサラダにもよさそうだ。

伊豆大島では1月25日(日)~3月22日(日)まで「椿まつり」を開催中。

椿は春の季語。東京の離島に一足早い春が訪れている。

島暮らし体験ツアーなども開催されていてかなり楽しそう。次は秋に訪問して種拾いにも参加してみようか。

訪問先

有限会社高田製油所